パスタを家で作ってほしい大きな理由がアマトリチャーナにある。飲食店であまり見かけない。提供してくれてもブカティーニではなく普通のロングパスタが多い。しかし、アマトリチャーナほどパスタ文化と歴史を語れるものは少ないので、ぜひ家庭で再現してルネサンスを起こしてほしい。
アマトリチャーナの意味と歴史
アマトリチャーナは平たく言えば、定番のトマトソース。ローマがあるラツィオ州の伝統食品に認定されている。名前はローマの北東約100kmに位置する山間の町「アマトリーチェ」が由来。ローマ方言ではマトリチャーナ(matriciana)と呼ばれるとか。発祥地とされるアマトリーチェでは、毎年8月の土日に、アマトリチャーナを振る舞うフェスティバルを開催しているらしい。
アマトリチャーナの起源は不明。そもそもイタリアでトマトソースが発明されたのは諸説ある。1つは1554年に医者アンドレア・マッテイオーリがトマトを使ったソースを作ったとする説、もう一つは18世紀後半とする説。一般的に食べられるようになったのは後者と考えられ、パスタにトマトソースが用いられたことを示す最古の文献は1790年にローマの料理人が書いたレシピ本。日本ではパスタ=トマトソースと思われているが、トマトソースの歴史は浅い。
グリーチャの後輩パスタ
アマトリチャーナはグリーチャのトマトソース有バージョン。今では知名度が逆転し、グリーチャのことを「白いアマトリチャーナ」と呼ぶひともいる。ただし、アマトリチャーナの方が後輩。グリーチャとともにアマトリチャーナを作りパスタ文化とトマトの歴史を体験してほしい。
ブカティーニを使うパスタ
アマトリチャーナにはブカティーニを使うのが基本。ブカティーニ(Bucatini)はローマではなくシチリア発祥のロングパスタ。ブカティーニ・アッラマトリチャーナ(Bucatini all'Amatriciana)と呼ばれる。極太のスパゲッティで太さは3.0mm以上。うどんのようなパスタと思ってもらえばいい。
名前はイタリア語で「穴」を意味する「ブーコ (buco) 」に由来。またはナポリ語で「穴を開いた」を意味する “perciato” から、ペルチャテッリ (Perciatelli) と呼ばれることもある。ロングパスタと穴のあいた筒状のショートパスタの長所をあわせ持つことから、ブカティーニはしっかりソースを纏うので重さのあるソースや多くの食材に合うことから特にローマで好まれているらしい。
メーカーも色々あるが、おすすめはラ・モリサーナ。1912年にはじまり、イタリアの20州の州都で最も標高の高いモリーゼ州カンポバッソの標高700mの高地にある。ミネラルが豊富な水を使用。ファビオさんをはじめ、料理人の愛用者も多い。パッケージがオシャレなこともポイントが高い。
ローマ伝統アマトリチャーナ
とにかく作って欲しいのがローマ伝統のアマトリチャーナ。材料が珍しいので日本のイタリアンで食べられない。だからこそ家庭で作る価値がある。YouTubeで紹介されているのは正規の食材を使わないから、玉ねぎを入れたりコンソメや調味料で誤魔化す。しかし、ローマ伝統アマトリチャーナは驚くほど美味しい。Here We Go!
伝統アマトリチャーナの材料
トマト缶はカットでもホールでもOK。出来合いのトマトソースやトマトピューレなどは味が強すぎてトマトソースの始祖を体感できない。トマト缶かミニトマトを使うのがおすすめ。パスタは当然ブカティーニ。うどんとラーメンくらい食感が違うので必須。重要なのがグアンチャーレ。アマトリチャーナはグアンチャーレの脂の旨味を出汁にするもの。グアンチャーレがないとアマトリチャーナ物語は始まらない。
ここにペコリーノ・ロマーノの旨味をプラスする。パルミジャーノやグラナパダーノ(粉チーズ)で代用してしまうと、醤油ラーメンと豚骨ラーメンくらい違ってしまう。ペコリーノをお使いください。
伝統アマトリチャーナのレシピ
- グアンチャーレを弱火で炒める
- ペコリーノを削っておく
- カリカリの直前でパスタを茹でる
- トマト缶を入れてよく煮詰める
- ブカティーニを入れて混ぜる
- 火を止めてペコリーノを混ぜる
- 皿に盛って追いペコリーノで完成
オリーブオイルは使わず、グアンチャーレをネイキッドのまま鍋で炒める。中火・強火はNG。弱火でじっくりじっくりグアンチャーレの脂を引き出す。スエ(汗をかかせる)調理法。グアンチャーレにサウナに入ってもらう感覚。時短ではダメ。気は長く5分以上かける。それが美味しいアマトリチャーナ。
グアンチャーレがサウナに入っている間にチーズを削っておく。最後にも削って大雪を降らせるので少し残しておきましょう。冬のファンタジーが待っている。削り終わってからパスタを茹で始める。
見て、見て、見て(懐かしのマーフィー岡田)。最低でもこれくらいカリカリ梅にして、脂を出す。もっと汗を出させても大丈夫。
パスタが茹で上がる5分くらい前にトマト缶を入れる。水分をぶっ飛びカードするため。トマトを潰しつつ、鍋底についたグアンチャーレの旨味をゴムヘラなどで、こそぎ出す。
こんな感じで水分を飛ばす。もっと飛ばしたいところ。これでグアンチャーレの脂の旨味とトマトの旨味が吸収合併する。
茹で上がったアマトリチャーナをダイブさせて、よ〜く混ぜる。
ブカティーニにソースが絡んだら削ったペコリーノを混ぜる。鍋を振ってよく混ぜる。
お皿に盛ったら、日本海の豪雪くらいペコリーノ・ロマーノの大雪を降らせる。信じられないくらい美味しくなるので遠慮はだめ。
↓伝統アマトリチャーナの食材↓
アマトリチャーナ(玉ねぎ)
伝統のアマトリチャーナを作ったらアレンジのレシピにも挑戦しよう。玉ねぎやローズマリーの旨味を援護射撃する。
アマトリチャーナの材料・食材
最近ではイタリア本国でも色んなバリエーションが存在し、保守的といわれるイタリア人も先鋭的なメニューに挑戦している。どうしてもグアンチャーレが無ければパンチェッタでOK。パンチェッタもなければベーコンでも良い。できればチーズはローマに敬意を込めてペコリーノ・ロマーノを使ってほしいが、パルミジャーノでも大丈夫。随分と寛容になったもんだ。ローズマリーは気分なので無くてもOK。
上の写真ではコッポラ社のトマトソースを使っているが、最近ではトマトソースの原点回帰の意味でピノッキオのトマト缶を煮詰めて自分でソースを作る。トマトソースでもいいが、こちらがおすすめ。
まずはオーソドックスなアマトリチャーナを試し、慣れてきたら色んなシェフのレシピで自分に合う最高のアマトリチャーナを完成させてほしい。ちなみにローマでブームなのがバルサミコ酢を使ったもの。
パンチェッタを炒めるときにオリーブオイルではなく、バルサミコ酢と白ワインビネガーを少量かける。アマトリチャーナは甘さが売りだが、ちょっとアダルトな味付けに変わる。エロかっこいいパスタが食べたい方はお試しを。カラブリア産の唐辛子を1つ入れるとキレも増す。アマトリチャーナ2.0。このようにアマトリチャーナの材料は無限大。ただし、絶対に外してほしくないのがブカティーニ。
アマトリチャーナの作り方・レシピ
- グアンチャーレは5㎜幅程度に切る
- にんにく、玉ねぎはみじん切りにする
- フライパンにオリーブオイルを入れて炒める
- トマトソースを入れて煮詰める
- 茹でたパスタを加え、チーズも削って混ぜる
- お皿に盛りオリーブオイル、大量のチーズを降らせる
アマトリチャーナは全料理人がYouTubeで紹介し、1つに絞るのが難しい。自分に合うレシピを探してみてほしい。速水もこみち師匠の他には小倉シェフもおすすめ。
いろんな料理人のポイントをまとめてみた。
アマトリチャーナのポイント
・肉を使うときは、しっかり塩をパスタにつける(小林幸司シェフ)
・玉葱は繊維に逆らってスライスでいい。炒めすぎない(小倉シェフ)
・パスタを入れたら細かく刻んだローズマリーを少し入れる(小倉シェフ)
・白ワインがあれば、パンチェッタと玉ねぎを炒める時に入れる(日高シェフ)
自分だけの最強アマトリチャーナが完成したら、コメント欄で教えくてください。ボンボヤージュ!
↓↓アマトリチャーナの食材↓↓
アマトリチャーナ(ショートパスタ)
アマトリチャーナは前述のブカティーニのイメージが強いが、イタリアのローマではショートパスタで提供する店も多い。日本人はショートパスタ=サラダ記念日みたいなイメージだが、イタリアではショートパスタ党も珍しくない。見た目の楽しさ、食感などロバート・デ・ニーロのように色んなキャラを見せてくれる。
リガトーニのアマトリチャーナの材料
ショートパスタはリガトーニの半分のサイズのメッツェマニケやペンネ、フジッリなど何でもOK。豚肉はグアンチャーレを使いたかったが、どこにも売っていない。代わりにパンチェッタを代打に送った。白ワインビネガーは本来は普通の白ワインを100cc使う。家にビネガーがあったので使った。カラブリア産の唐辛子は1本でも強烈なインパクト。辛いものが苦手な方は無くてもOK。
トマトピューレ
トマトピューレは完熟トマトを裏ごしして煮詰めたもの。カゴメのものは、トマト7個分を使っている。最初に紹介したトマト缶はに比べトマトの旨みが凝縮されている。酸味が強いので完全にリコピン大魔王に向いている。酸味が苦手な方はトマト缶にするか、バターのコクを加えるといい。
リガトーニのアマトリチャーナの作り方
- パンチェッタを弱火で炒める(油なし)
- 焦がさず脂をじっくり引き出す
- 脂がたっぷり出たら唐辛子、ビネガーを加える
- パスタを茹ではじめる
- アルコールが飛んだらトマトピューレを入れる
- ピューレの水分がなくなるまで煮詰める
- 茹でたパスタをダイブさせ混ぜる
- 皿に盛ってペコリーノの大雪を降らせる
パンチェッタを炒めるときは弱火でじっくり。慌てない慌てない。一休さんが大事。
フライパンの底にパンチェッタの旨みがこびりつくまで炒める。
白ワインビネガーを入れるときはフライパンの底の旨みをしっかり吸い込ませる。木べらでこすると良い。
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白ワインビネガーのアルコールが飛んだらトマトピューレを入れる。まだ水分が多い。アマトリチャーナを作るときはトマトエキスの量が多いので深型の鍋がおすすめ。
水分が飛ぶまでしっかり煮詰めるのがポイント。
ショートパスタは洞窟の中に水分が残りやすいので、しっかりと切る。
お皿に盛ったらペコリーノチーズをたっぷり削る。辛いのが苦手な人やトマトの酸味が苦手な人は気持ち多めに。チーズを入れすぎると逆に甘くなるのでオリーブオイルを回しかけて緩和させる友好条約もおすすめ。
パスタは道具にこだわるほど美味しくなる、楽しくなる、愛おしくなる
最後までご覧いただき、あリガトーニ。